インタビュー掲載 : “FIFTEEN” QUESTIONS – Moskitoo about the Magic of Sound(s)
Interview : “FIFTEEN” QUESTIONS – Moskitoo about the Magic of Sound(s)
Moskitoo has answered 15 questions in an interview with the Berlin-based web magazine Fifteen Questions.
The interview is conducted in a question-and-answer format, covering topics such as sound and the environments surrounding it.
Please read it here.
https://15questions.net/interview/moskitoo-about-magic-sounds/page-1/
ベルリンの「音楽そのもの」に特化した世界初の音楽マガジン ”Fifteen Questions”で、Moskitooが15の質問に答えました。
”Fifteen Questions”はアーティストの最新作品やプライベートについてではなく、音楽や音を取り巻く環境についての考察や質問形式のインタビューを中心とするウェブマガジンで、2015年には書籍化されています。
Moskitooの質問&回答を日本語で翻訳したものの一部を以下に掲載します。
“FIFTEEN” QUESTIONS – Moskitoo about the Magic of Sound(s)
(聞き手・質問文:Fifteen Questions)
Q.音楽を聴くとき、私は形や物体、色が見えます。あなたが音楽を聴いているとき、体の中では何が起きていますか?目を開けて聴くことが多いですか、それとも目を閉じて聴きますか?
音楽を聴いていると内面で様々な感覚が交錯します。
ゆっくりと形や映像が浮かんできたり、体験していないかもしれない何かの記憶が浮かんできたり。
音楽は内なる感覚を呼び起こす装置のようです。
感情や思考が波のように寄せては返し、消えてゆく感覚があります。
音の響きや変容していく様子をより辿りたいときは目を閉じて音楽を聴くこともありますが、多くの場合は外を歩いたりしながら、現実の雑音と混ぜ合わせながらリスニングすることが多いです。
Q.音が特に好きなアルバムやアーティストについて教えてください。
Cluster & Eno「Cluster & Eno」、Taylor Deupree「Northern」、FourColor「Air Curtain」
Cluster & Enoの作品はMoskitooとして音楽を始めるにあたり大きな影響を受けました。カバーも素晴らしい。
Taylor DeupreeとFourColorの二人は身近な存在でありながら、私の楽曲の音作りに影響を与え続けている二人です。いつも彼らの音を研究しています。
Taylor Deupreeは私の新作のマスタリングを、FourColor(Keiichi Sugimoto)はミックスと楽曲のリミックスで参加してくれています。
Q.日常の場所や空間、あるいは音が気になるデバイスなどはありますか?それは何でしょうか?
日常生活の中で埋もれてしまいがちな小さな音に惹かれます。
ハードドライブのうなる音、電車の音やアナウンス、カフェで知らない誰かの会話、路地裏で流れるラジオの微かな音など。今の時期(秋ごろ)は日本では街の中でも鈴虫の鳴き声を聞くことができます。
ざわめきのひとつひとつに音に耳を澄ますと、どんな音もそれぞれが誰かの物語や人生の一端を担っているようで、異なる世界へと繋がる糸をたどっているような感覚になります。
Q.極端な音響特性を持つ空間(無響室や洞窟など)に行ったことはありますか?その体験はどのようなものでしたか?
今年の夏、大きな鍾乳洞の洞窟でフィールドレコーディングを行いました。洞窟内には水琴窟があり、
水の滴りが奏でるメロディに耳を澄ませていると、自然の中から音が生まれ、響き、また音が沈黙の中に還える姿に出会えました。
遠くでほかの家族が話している声が聞こえることもありましたが、言葉は反響の中で輪郭を失って、私たちに届くのは漂う残響だけでした。共鳴と静寂が共存する空間であり、音の起源のように感じられる場所でした。
Q.お気に入りの録音や演奏場所はどこですか?
私は主に小さな自宅スタジオで録音をしています。電子音楽を制作することが多いので、そうした環境が中心です。日本のシスターの言葉に「置かれた場所で咲きなさい(Bloom where God has planted you.)」という言葉がありますが、この小さなスタジオで、電源の根を張り巡らせた植物のように、ここから何かを生み出す事を楽しんでいます。機材がある場所ならどこでも居心地の良い場所です。
ライブ演奏では、自然と静けさが融合する寺院で演奏した思い出が印象深いです。木の柱や畳は音を吸収してより音がタイトに響き、和紙で作られた障子越しに風に揺れる葉音や自然の環境音がやわらかく室内に溶け込みます。日本の古来の建物が自然の美しさを讃えた造りになっていることも感じられます。
また、プラネタリウムでの演奏も特別な体験です。ドーム型の天井の下では、座る席によって天井の高さが異なるため降り注ぐ音に違いが現れます。空間そのものが音楽の一部になるような感覚があります。
どのような場所でも異なる特性があり、それぞれの空間と音との対話が生まれます。それぞれの空間の
持つ響きが私の音楽に新しい解釈を与えてくれていると感じます。
Q.音楽や音は「物質的」だと感じますか?音を扱うことは、何かを彫刻したり形作ったりしているように感じますか?
音を組み合わせて音楽として形を持たせていく作業は、彫刻に似ています。波形を削ったり、重ねあわせ、輪郭を調整し、空間に配置していく作業は物理的なものを形作る行いと近いです。
一方で、音をレコーディングする時は、風を瓶に閉じ込めるように、できるだけ現象のような捉えられない瞬間を切り取ったり、偶然的な音に出会いたいとも思っています。
私の音楽を「言葉で音のありかを彫刻するようだ」と友人がコメントしてくれましたが、
「Embroidery Story」という楽曲はちょうどそのような感覚で、言葉で音楽の手がかかりを彫刻するように作った音楽です。
Q.音響的幸福、健康について
コロナ禍以降に自然音やアンビエントミュージックが流行したことには、人々が音楽にリラクゼーションや安らぎを求めていることを感じています。一方でこれは音響的なことに限らずですが、健康で健全あれば、美しい音であれば幸福なのか… という点については私は賛成ではありません。
リラクゼーションや健康、幸福を目指した音楽よりも、役に立たないもの、不完全なもの、粗さのあるものや違和感のある物事を私は追求したいです。
不完全さやぎこちなさの中にこそ、本質的な美しさがあると感じています。
実際に私の楽曲はさまざまな「無駄なもの」「捨てるべき音」がきっかけで作られることが多いのです。
ある意味でそれは音響的公害の一種と言えるのかもしれません。
その他、全文はオリジナル記事でご覧いただけます。
“FIFTEEN” QUESTIONS – Moskitoo about the Magic of Sound(s)
https://15questions.net/interview/moskitoo-about-magic-sounds/page-1/
“FIFTEEN” QUESTIONS
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